<ブータンGNHツアー2012・春 報告集より>
プナカ県知事へのインタビュー(中川久美子)
プナカは、1955年にティンプーが通年首都になるまでの約300年間、ブータンの冬の首都でした。第1回の国会もここで開催され、プナカ・ゾンでは来日された現国王の結婚式が行われたことでも有名です。標高1,350mとティンプーに比べて1,000m以上も低く、気候は亜熱帯気候です。
そんな歴史あるプナカの県知事にお話を伺うことができました。プナカに限ったことではないようですが、農業が主力の産業で、お米やマンゴー、グァバ、オレンジ、パパイヤ、バナナなどをティンプーへ出荷しているそうです。県知事として誇りに思っておられるところは、ブータンの歴史がプナカから始まったということで、プナカ・ゾンにはプナカを設立したンガワン・ナムゲルの遺体が安置されています。
県知事の発展についての考え方もGNHに基づいており、「世界の先進国や発展途上国が抱える問題を注意深く見つめつつ、みんなの幸せを追求していくこと、自分たちのためにやってくれていると県民が思うことをやっている」とおっしゃっていたのが印象的でした。
主要プロジェクトは、グリーンスクール、自然公園の設立です。まず、グリーンスクールのプロジェクトでは、環境教育に力を入れ、学びたい、行きたいと思えるような学校づくりを推進されています。立地については、交通量が少なく、十分な遊び場や農園が確保できるような場所が選ばれています。そして、教員のマネジメントについては、人間性を重視し、その上で「3つのH」に重点が置かれています。3つのHとは、Head、Heart、Handで、Headは環境保護を考える頭脳、Heartは環境保護への強い思い、Handはそれらを実践する手を表しています。
現在の日本の若者は希望を持てない状況にあるが、それについてどう思うかという質問に対して知事は、ブータンもインターネットやテレビなどによる西洋の影響が大きく、そうなる可能性があるが、ブータンは民族衣装の着用やゾンカ語などの伝統文化に助けられている要素が大きいとおっしゃっていました。また、子育ても父母だけでなく、祖父母やみんなで育てることが当たり前で、子どもたちが自分たちのルーツやアイデンティティを見失うことがなく、伝統文化も継承されています。そして、大人たちが常々”You are future”という言葉をかけていることも大きいようです。また、ブータンの政治が安定しており、尊敬できる人が身の回りにいるということ、豊かな自然への畏敬の念ということが子どもたちの希望につながっているようです。
2つ目の自然公園の設立については、幸せは環境と深く関わりを持っているという考え方から、人々が自然公園へ足を運ぶことで幸せを感じられるようにと行われているものです。人々がお金儲けばかりに気をとられていると忙しくなり、公園へ足を運ぶ時間がなくなりますが、それは幸せとは言えないということのようです。
また、市民と協働して行政運営をしていくということも重要だとおっしゃっていました。県ではアイディアや技術、予算を提供するだけで、方針の多くは市にある小さな議会が考え、決定されています。前述した自然公園の管理についても、地域で決め、地域で行われています。
このように、ブータンでは時間や自然とのバランスが重視されており、何かを選ぶときにどちらかに偏らないように心がけられています。なぜなら、偏るということは、誰かの幸せを害することにつながると考えられているからです。そして、自分以外の人の幸せを願う、周りの人や年上の人を敬うということが、生き方の根底にあります。政治と宗教、人々が一体となり、GNHに基づく考え方が国中に浸透しているのだと感じました。それが、日本の行政との大きな違いであり、日本が見習うべきところだと思いました。
◆◆ 現在、2013年春、ブータンGNHツアー募集中。今回もプナカにも訪れる予定です! ◆◆
2012年12月31日
プナカ県知事へのインタビュー
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2012年12月28日
辻信一さんより:東部ルンツィ県で考えた「遅さ」
12月28日執筆(フェイスブックより転載)
今、11月に続いて、ブータンの東部を旅している。プナカという西部の町には、珍しい仏教の儀式が行われていて、有名なラマ僧たちの祝福を受けようと、なんと20万人が集まっているという。そのせいか、どこへ行っても、ちょっと普段より人がすくないような・・・。20万というのが本当だとするとブータン人の3人から4人にひとりがその大儀礼に出ていることになる。そしてこの儀礼、21日間続くのだ。
田舎を旅すると、ブータンの人々の歩く速度の遅さに改めて感動する。まるで歩くことが瞑想であるかのよう。
ブータン北東部のルンツィ県では、縁あって、すばらしいラマ僧、リンジン・ロンヤン師を訪ねることができた。彼は繰り返し、「ゼモートル(小さい)」という言葉を使った。小さい田舎に住む自分のような小さい人間の小さい考えを聞きにわざわざこんな遠隔地に来てくれたあなたに敬意を表します、というふうに。
彼は例えばこう言った。人生において仕事には終わりがないように見える。そしてあくせくとその仕事に追い回される。でも、一日の終わりに、そして人生の終わりに、ふと自問してみる。自分がしてきた仕事とはいったい何だったのかと。これがたぶん、人生で最も難しい問なのかもしれない。
その日の終わりに別れの挨拶とともに、ラマ僧はこう最後に付け加えた。忙しい人生を送るかどうか、それはあなた次第なのです。あなたが忙しくない人生を選べば、あなたの心は平和で、自然も神々も、みな幸せでしょう。あなたの心に平和がありますように。
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2012年12月26日
ティンプーの伝統治療院
<ブータンGNHツアー2012・春 報告集より>
伝統治療院訪問(須藤祐美子)
ブータンでは西洋医療院と伝統医療院があり、どちらも受診料は無料で、本人の希望で選択することができます。
今回訪ねた伝統治療院は、問診、診察の後、主にハーブを用いたスチーム療法と丸薬の服薬、または、金属を用いてツボを押す治療法が行われているとのこと。
お日様の光を浴びながら、のんびり穏やかに開院するのを待つ患者さんたち。
日本の病院のような慌ただしさがない空間が印象的でした。
馬から落馬し、膝を痛めた患者さんにインタビュー(写真)
なぜこの伝統治療院に来ているのか伺うと、当初、他の病院に行っていたのだが、検査をしても異常がない、どうしても痛むなら切断するしかないと言われ、最後の望みを託して来院しているとのことでした。
治療法はスチーム療法30分のみとのことですが、少し良いようだとのこと。
今までのさまざまな思い、不安や不満、複雑な感情をはきだし、じっくりと受け止めてもらったことが一番の特効薬だったのでしょう。
患者さんの気持ちに寄り添った先生の対応が、不安だった心と身体を温かく包み込み、治癒を促したのだろうと思った。
医療の原点を実感したエピソードでした。
◆◆ 現在、ブータンGNHツアー、3月募集中。今回も伝統治療院にも訪問する予定です! ◆◆
伝統治療院訪問(須藤祐美子)
ブータンでは西洋医療院と伝統医療院があり、どちらも受診料は無料で、本人の希望で選択することができます。
今回訪ねた伝統治療院は、問診、診察の後、主にハーブを用いたスチーム療法と丸薬の服薬、または、金属を用いてツボを押す治療法が行われているとのこと。
お日様の光を浴びながら、のんびり穏やかに開院するのを待つ患者さんたち。
日本の病院のような慌ただしさがない空間が印象的でした。
馬から落馬し、膝を痛めた患者さんにインタビュー(写真)
なぜこの伝統治療院に来ているのか伺うと、当初、他の病院に行っていたのだが、検査をしても異常がない、どうしても痛むなら切断するしかないと言われ、最後の望みを託して来院しているとのことでした。
治療法はスチーム療法30分のみとのことですが、少し良いようだとのこと。
今までのさまざまな思い、不安や不満、複雑な感情をはきだし、じっくりと受け止めてもらったことが一番の特効薬だったのでしょう。
患者さんの気持ちに寄り添った先生の対応が、不安だった心と身体を温かく包み込み、治癒を促したのだろうと思った。
医療の原点を実感したエピソードでした。
◆◆ 現在、ブータンGNHツアー、3月募集中。今回も伝統治療院にも訪問する予定です! ◆◆
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