やはり旅で印象に残るのは、その土地の人々との出会いだろうと思います。
ブータンの人々の印象はといえば、穏やかな笑顔、物静かで自然体。そして男性の姿勢の良い凛々しい姿、といったところでしょうか。
今回の旅で出会った様々な人々に共通するものが何かを考えてみるとき、思いつくのは、「完ぺきではなくても自分は一生懸命に生きている」という自信のようなもの。自分を認め自己に対して肯定的。起こってもいない未来のこと、終わってしまった過去のことを思い煩うことなく淡々と生きているゆえの、穏やかさ、落ち着きとでもいうようなもの。そして今を肯定的に捉えているすがすがしさのようなものだった気がします。
GNHという世界にも類を見ない政策が行われる所以は、国王に代表される、仏教の教えに根差した徳の高い優れたリーダーがいるためだろう、、、と漠然と想像していました。でも実際に訪れてみて、あの国を形作っているのは、普通の人々。足るを知るという仏教の教えが深く根付いた一人ひとりの心の内にあるものなのではないかと感じるようになりました。例えばホームステイ先の農家の暮らしぶりも、決して裕福とは言えないものでしたが、それを仕方なく受け入れているというよりはむしろ肯定している感じでした。
賢く徳の高いリーダーと、自己を肯定できる国民の絶妙の組み合わせだからこそ成り立っている気がします。
国民の幸せを指標にするというGNHを掲げるこの国の行く末には、直面する様々な問題があることは容易に想像できますが、進む道は険しいと知りながらあえてその道を選んでいるように見えます。現実には様々な問題も多く起こってくるけれど、それを直視しながらも理想を追いかけている。知恵を出し合って注意深く自分たちの独自の進むべき道を選んでいる姿勢に、敬意とあこがれの気持ちを持たずにはいられません。
さて、経済大国に暮らしながら、なかなか幸福感を得られない日本人と、たとえ貧しくとも幸福だと感じながら生きるブータンの人々。その違いはあっても、根底に流れている大切なものは同じ。私たち日本人も、忘れてしまったことはあっても深いところではそれに気づき始めている、、。
旅をご一緒した素晴らしいお仲間のみなさんのおかげでそれを実感できたことは、今回の旅の一番の収穫だった気がします。みなさん、本当にありがとうございました。
(2013年報告集より 報告者:中久保久仁子さん)
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2013年06月05日
ブータンを旅して【2013年春GNHツアー報告集より】
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| 2013春GNHツアー
2013年06月04日
ガサ・ツェチュ祭【2013年春GNHツアー報告集より】
2013年3月21日朝ホームステイ先のダムジ村を出発。
ところどころ雨のために崩れた山道を小型バスは進んでいく。しばらく走ると、道沿いにたくさんのテントが目立つようになった。ツェチュに参加するため、北部から馬とともに家族総出でやってきた遊牧民ラヤの人々だという。青いビニール製のテントの隙間から子供たちが顔をのぞかせてこちらを見ている。
やがて、ガサ・ゾンがその姿を現した。美しい白壁の伝統的な建てものが山の上にそびえ立つ。荘厳な雰囲気とともに威容を感じさせる、まるで山城のようだ。
ゾンに入るときは民族衣装の正装が義務づけられている。 男性はゴの上にカムニという白い布(王様は黄色、貴族は赤など身分によって色は違うそうだ)を肩から輪のように斜めにかけ、女性はキラの上からラチュとよばれる長い手織りの華やかな布を左肩にかける。
私たち外国人に服装の制限は多くはないが、帽子はとらなければならない。
山の斜面を利用したゾンの建物は奥に進むほど高くなる。狭い入口から上へ上へと延びる石の道では 神聖な場所へと足を踏み入れていく高揚感に包まれる。
急な階段上の広場で、もう祭りは始まっていた。私たちのグループはガサ・ツェチュに参加した初めての外国人だったらしい。ガサ県知事や高僧と同じ、屋根付きの貴賓席にて見学。恐縮しつつ飲み物やお菓子までいただいた。
黒い衣装に黄色い輪の帽子をかぶった男性たちの明るい感じの歌と踊り。きらびやかなゴとキラに身を包んだ男女が交錯する楽しげな歌と踊り。動物や骸骨などさまざまな異形のお面と原色の華やかな衣装に身を包み、回転したり体を大きく反らせたりと激しい動きを見せるお坊さんたちによる宗教的な踊り。黒を基調とした独特の民族衣装にとんがり帽子姿のラヤの娘たちの民謡と踊り。そして、終始動き回りそれらを茶化すようにおどけて会場を沸かせる道化たち、、、。
入れ代わり立ち代わりさまざまな歌や踊りが繰り広げられるうちに観客は増えはじめ、昼頃には華やかなゴやキラで着飾った子供たち、老若男女で広場は埋め尽くされた。
広場からさらに階段を上っていくと、靄に包まれた山々。墨絵のような世界が眼下に広がる。若い僧たちの真っ赤な僧服の背中越しにそれを眺めると、黒と白と赤のコントラストが美しい。そこはまるで天空の世界。神様に一番近い場所(おそらく!)で味わった至福のひと時だった。
さて、数日後のブータンの新聞によれば、昨年までのガサ・ツェチュには、お坊さんたちによる華やかな宗教的な踊りは行われなかったので、ラヤの人たちは遠くプナカ・ゾンまで足を延ばしていたとのこと。今年は演目も多くなり、多くの人が参加して観客も増え、例年にないにぎやかなガサ・ツェチュとなったそうである。
私たちグループにとっても、本来の予定にはなかったガサ・ツェチュ参加だったのだが、パロなどの大きなツェチュとはまた違う、ゆったりとした雰囲気を味わうことができたのは本当にありがたかった。ペマさんの計らいと、突然の外部からの来訪者である私たちを快く迎え入れてくださった皆さんに心から感謝したい。
(2013年報告集より/報告者:中久保久仁子さん)
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ところどころ雨のために崩れた山道を小型バスは進んでいく。しばらく走ると、道沿いにたくさんのテントが目立つようになった。ツェチュに参加するため、北部から馬とともに家族総出でやってきた遊牧民ラヤの人々だという。青いビニール製のテントの隙間から子供たちが顔をのぞかせてこちらを見ている。
やがて、ガサ・ゾンがその姿を現した。美しい白壁の伝統的な建てものが山の上にそびえ立つ。荘厳な雰囲気とともに威容を感じさせる、まるで山城のようだ。
ゾンに入るときは民族衣装の正装が義務づけられている。 男性はゴの上にカムニという白い布(王様は黄色、貴族は赤など身分によって色は違うそうだ)を肩から輪のように斜めにかけ、女性はキラの上からラチュとよばれる長い手織りの華やかな布を左肩にかける。
私たち外国人に服装の制限は多くはないが、帽子はとらなければならない。
山の斜面を利用したゾンの建物は奥に進むほど高くなる。狭い入口から上へ上へと延びる石の道では 神聖な場所へと足を踏み入れていく高揚感に包まれる。
急な階段上の広場で、もう祭りは始まっていた。私たちのグループはガサ・ツェチュに参加した初めての外国人だったらしい。ガサ県知事や高僧と同じ、屋根付きの貴賓席にて見学。恐縮しつつ飲み物やお菓子までいただいた。
黒い衣装に黄色い輪の帽子をかぶった男性たちの明るい感じの歌と踊り。きらびやかなゴとキラに身を包んだ男女が交錯する楽しげな歌と踊り。動物や骸骨などさまざまな異形のお面と原色の華やかな衣装に身を包み、回転したり体を大きく反らせたりと激しい動きを見せるお坊さんたちによる宗教的な踊り。黒を基調とした独特の民族衣装にとんがり帽子姿のラヤの娘たちの民謡と踊り。そして、終始動き回りそれらを茶化すようにおどけて会場を沸かせる道化たち、、、。
入れ代わり立ち代わりさまざまな歌や踊りが繰り広げられるうちに観客は増えはじめ、昼頃には華やかなゴやキラで着飾った子供たち、老若男女で広場は埋め尽くされた。
広場からさらに階段を上っていくと、靄に包まれた山々。墨絵のような世界が眼下に広がる。若い僧たちの真っ赤な僧服の背中越しにそれを眺めると、黒と白と赤のコントラストが美しい。そこはまるで天空の世界。神様に一番近い場所(おそらく!)で味わった至福のひと時だった。
さて、数日後のブータンの新聞によれば、昨年までのガサ・ツェチュには、お坊さんたちによる華やかな宗教的な踊りは行われなかったので、ラヤの人たちは遠くプナカ・ゾンまで足を延ばしていたとのこと。今年は演目も多くなり、多くの人が参加して観客も増え、例年にないにぎやかなガサ・ツェチュとなったそうである。
私たちグループにとっても、本来の予定にはなかったガサ・ツェチュ参加だったのだが、パロなどの大きなツェチュとはまた違う、ゆったりとした雰囲気を味わうことができたのは本当にありがたかった。ペマさんの計らいと、突然の外部からの来訪者である私たちを快く迎え入れてくださった皆さんに心から感謝したい。
(2013年報告集より/報告者:中久保久仁子さん)
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posted by GNH at 18:28| Comment(0)
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