
2012年11月、東部ブータンツアー報告集より。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
村の助役のカルマ・ワンチュクさんと村のオーガニックコットン責任者のペマのお父さんを囲んでオーガニックコットンプロジェクトについてディスカッションをしました。また昨日聞けなかった村の生活についても伺いました。この話し合いの時昨日来られなかった村の人たちがぞくぞくと私たちを歓迎するために色々なお土産をもって次々に訪ねてきてくれました。
私たち一人一人に村の女性がキャッサバやピーナッツ、卵、みかん、アラ(ブータンのお酒)などを持ってきてくれます。そのなかの女性の一人が一言「私たちには何もなくこれしかありません。ぜひ受けとってください」と言ってくれました。
ここで出してくれているものはすべて買ったものではなく村の人が持ちよってきてくれたものです。食事の後は、ツアー参加者と村の人たちと火を囲み、ブータンの歌を歌い、その歌に合わせてみんなで踊りました。
<カルマ・ワンチュクさんの紹介>
カルマ・ワンチュクさんは村長の次の位の助役です。ここでいう村はチモン村だけではなくこの地域の5つの村をあわせた村のことをいいます。これを「ゲオック」と言う行政区分になります。ゲオックは日本でいう郡です。そのゲオックの助役です。ブータンでは助役のことを「マンガ」村長のことを「マンガップ」と呼びます。
Q.オーガニックコットンプロジェクトついて今は何人かの有志で試験的にやっていますが、村全体のプロジェクトになるといいと思っています。印象はいかがですか。
カルマ:オーガニックコットンに関して実は新しいことではありません。我々が昔から長々と伝統を持って行ってきたことですが、いつの間にか忘れて廃れさせてしまいました。そしてそれを無視してきました。このプロジェクトは文化の復活という意味で重要だと思います。しかし自分自身はコットンを育てていた時代を知りません。そういうことで少し自信がありません。(註:カルマさんは38,9歳)
Q.どうしてこの伝統が廃れたと思いますか?
カルマ:理由はよくわかりません。しかし、ペマが言っていることなのできっといいことだと思っています。私はこの村でコットンを作っていたことを全く知りませんでした。この話がでて驚きました。
<石井朝子さんから国際的にオーガニックコットンを栽培する意味を説明>
石井:私はインドを中心にオーガニックコットンの生産者とともに作ったものを世界の市場にむけて生地や服として広げていく仕事をしています。まず、世界の市場を考えるとコットンは95%が遺伝子組み換えです。4%が普通の農薬や肥料を使った方法で作られ、残りのわずか1%がオーガニックというのが現状です。
正確にいうと1%以下です。地球上に育てられているコットンのなかで1%以下しかオーガニックコットンは存在しません。オーガニックコットン栽培することは地球的規模でみてもものすごく貴重なことです。

<辻信一さんから遺伝子組み換えの種(GMO)について説明>
辻:コットンの場合は食べ物ではないのですごく広がりました。虫に強くすごく強力な除草剤に耐えうるコットンを作りました。飛行機から除草剤をまくとほかの草は死にますがコットンだけ生きています。こうしてモンサントは種や除草剤を売って儲かる仕組みを作りました。これが色々な問題を引き起こしています。
一つの問題は環境汚染です。除草剤をたくさん使用しているので多くの人々が病気になり死にます。もう一つの問題は耐性の草や虫を作り出すことです。殺虫剤では死なない虫がでてきます。それが広がると生態系が全部壊れてしまいます。借金して種や除草剤を買ったものの耐性の虫や草がでてくると思ったとおりにコットンはできません。そして倒産してインドの農民に多数の自殺者がでています。
辻:ブータンの首相と面会して直接聞いたことですが、ブータンは「オーガニック国家にする」と宣言しています。これは国会で決めたことです。オーガニック国家にするには時間がかかります。化学肥料や除草剤を使っている人もいます。今その人たちを急にやめさせるのではなくて時間をかけてそっちの方向に導いています。
テストケースとして10年前からガサ県をオーガニック県にしています。今完全にオーガニックになっています。オーガニックでもできるということがわかりました。
Q.仏教的に農薬で虫を殺すのはよくないことだと思いますがどうですか。
辻:殺虫剤は使っていないところが多いです。しかし草ならよいと除草剤は使っているところがあります。除草剤によっては川の生き物もみんな死んでしまいます。除草剤で動物たちが死ぬことまで考えていません。西の方から使い始めています。
Q.オーガニック以外の方法は知っていますか。
カルマ:「ユーリア」という化学肥料がここに政府から紹介されたことがあったことを覚えています。使い始めたら土が固くなってしまいました。いいところがないのにお金がかかってしまします。それならそんなものいらないと元の方法に戻りました。

★チモン村を訪れる、2013冬ブータンGHNツアー。詳細はこちら★