2014年11月20日
【コラム】昭和20年代の暮らしを想起させたドチュカ村でのホームステイ
ブータンGNHツアーでは、毎回ホームステイを組み込むようにしています。それは、本やテレビとは異なり、ふつうのブータンの人の暮らしを、リアルに体験させていただくことができる貴重な機会だからです。言葉はゾンカ語(東部だとシャショーップ語)と英語が入り交り、ボディーランゲージの世界。滞在させていただいた家族の数だけそれぞれのエピソードが生まれます。今回は、中川久美子さんからの報告です!
ドチュカ村でのホームステイ
中川久美子(2014ブータンGNHツアー秋参加者)
ツアーで楽しみにしていたのが、農家でのホームステイでした。今回で2回目になりますが、前回は不安ばかりが先立っていたこともあり、あまり楽しめませんでした。でも、今回はトイレ以外は特に不安はなく(前回は青空トイレだったので、衝撃的でした(笑))、有意義な時間を過ごすことができました。
ドチュカ村は前回ステイしたイェベサ村とは違い、車道から近いところに村がありました。村に着くと、村人がみんなで出迎えてくれ、それぞれホストファミリーと共に、舗装されていない田んぼ道を歩いて村の中へと向かいました。私は有機トウガラシ農家の家に、他のメンバー2人と一緒にステイさせてもらうことになりました。家は伝統的なブータンの木造の家で、1階が家畜や家畜のエサなどを置いておくところ、2階が住居になっています。窓はありますが、ガラスのサッシなどでなく、木の扉があるだけです。
くつを脱いで家に入るのは、日本と同じです。炊事場は、薪で炊くかまども外にありましたが、家の中はガスコンロでした。トイレは共同トイレで外にあり、手動の水洗トイレといった感じ(水瓶の水をバケツですくって流すタイプ)で電気もあり、今回は青空トイレではなく少しホッとしたり(笑)。お風呂はおそらくなく(1泊だけで入浴していないのでわかりません。)、他のメンバーが共同の水道で髪を洗っている女性を見たと言っていたので、水道などで洗うのかなといった感じでした。
子どもたちが少し英語を話せる(学校での授業が英語であるため)以外は、現地の言葉であるゾンカ語での会話になるのではっきりとはわからなかったのですが、おそらくお父さん、お母さん、中学生ぐらいの男の子、小学生2年生の女の子、5歳ぐらいの男の子といった家族構成でした。お客さんは、日本では座敷へ案内するのと同じで、家の中でも手入れの行き届いている仏間でということのようで、家に着くと私たちも家の仏間に案内され、絞りたてのミルクにビスケットと米菓子、フルーツでもてなしていただきました。
食事はもちろんトウガラシをふんだんに使った料理で、朝も夜も4〜5種類ぐらいのおかずが並び、ご飯といただきました。机などはなく、直に床にお皿を置き、床に座って食べます。私は、絞りたてのミルクと、朝食の採れたて卵のスクランブルエッグのようなものがとても美味しかったことを覚えています。朝からかなりのボリュームで、ブータンの方はご飯をたくさん食べます。
ホームステイで感じたことは、きっと昭和20〜30年代ぐらいの日本もこんな感じだったんだろうなぁーということです。ここ数年、仕事などで昔の暮らしについて調べたり、年配の方にお話を伺ったりする機会が多いので、その話とこの村での暮らしが、とてもぴったりと重なるような感じがしました。今までは耳で聞いていた話を、実際に自分で体感しているような感覚です。(農村でも、みんな携帯電話を持っているというところは、少し違いますが。)
私たちは日本の便利でとても衛生的な暮らしに慣れているので、やはり抵抗がある部分もありますが、ここでの暮らしも慣れてしまえば普通になるのかなとも思いました。実際、こういったところを旅するにつれ、だんだんと抵抗がなくなってきて、逆に心地よく感じる部分もあります。ブータンを旅していると、日本で暮らしているときのような何か余裕のない切羽詰まった感じや、こうしなければというのがなく、心が穏やかになるせいでしょうか。
さて、ホームステイで一番楽しかったことといえば、子どもたちとたくさん遊んだことです。ステイ先の子どもだけでなく、近所からも子どもたちが集まってきて、折り紙大会、切り絵大会になりました。折り紙を折って見せると、もっと折ってという子、折り方を教えてという子、また切り絵を自分で始める子などなど、お互いの未熟な英語で全ては通じないけれども、とても人懐っこく素直な子どもたちばかりでした。それもやはりこの国の、そして村の風土が育んでいるのかなと思いました。楽しい遊びには時間を忘れて夢中になる。そういうところは日本の子どもたちと何も変わらないし、やはり日本の子どもたちも根っ子の部分はとても素直で、子どもは世界共通だなぁーとも思いました。
子どもたちに、将来は何になりたいかという質問をしたところ、子どもたちはパイロット、先生、歌手などという答えが返ってきました。農業以外の選択肢ができ、ただそういった仕事に就けるのは現状ではわずかな人たちだと思うので、この先、子どもたちの人生がどうなっていくのか、少し心配にもなりました。同時に、農業も大切にしてくれるといいなとも思いました。
何はともあれ、こうやって子どもたちを関わっている時間は私にとってはとても楽しく、これこそが自分の人生をかけて取り組むことなんじゃないかと強く思いました。そして、このホームステイを通して、「本当に豊かな暮らしとは何か」ということを改めて考えさせられました。
posted by GNH at 23:03| Comment(0)
| 西ブータン
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