2011年10月05日

Tシャツasメディアはタイにも健在!〜タイGNHツアー報告

エンゲージド・ブディズムの指導者として知られるスラック・シワラックさんの活動に学ぼうと辻信一さんのゼミと訪れたタイ。短い期間(8月26日〜28日)でしたが、スラックさんご自身からお話を聞くだけでなく、彼が設立したタイのNGOの草分けとも言える、Sathirakoses-Nagapradeepa基金(SNF)(1968年設立)関連の団体・施設を訪問することができました。

ツアーを振り返ると、日本に住む私たちに必要なこと、地域でのつながりづくりや社会運動の展開の仕方など、本当に多くの学びがあったことに改めて気づかされます。

そのダイナミックなNGOムーブメントの様子を何回かに分けてご報告します。(宇野真介)


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■We Change

「普通の人たちが世の中を変えていく」をテーマに活動している点や「テレビを消そう運動」など、We Changeはナマケモノ倶楽部と近しいものを感じる団体でした。同時に、その活動に学ぶことの多い団体でもあると思いました。

巨大な社会システムにどのように抵抗するのか、また運動を展開する中で、私たちが抱く無力感をどうやって打ち消すのか。We Changeの参加対象は「普通の」個々人ですが、NGOにありがちな、巨大な組織をつくって巨大なものに対抗しようという視点は全くありません。

なぜなら、彼らは巨大化することの弊害〜抵抗しようとする相手と同じ問題を抱えることになるばかりか、組織として集められた「力」は、必ずしも人々が個々に活動展開する力にはならない〜を知っているから。このため、We Changeは団体とはいえ、「会員」を募ることには関心がないのだそうです。

むしろ、小さいながら運動を展開する上で必要なのは、個々のスキルを活かした協力体制。具体的には、創造力を活かした企画立案、人間関係づくり、活動支援をする裏方、活動の場作りの4つのスキルの生かしあいです。We Cahngeは、誰でも何らかの組み合わせで、社会に必要とされるスキルをもっていると考えます。

こうした分類の中で、自分の得意分野をきちんと認識することは「自分にできること」に気づき、巨大なものに立ち向かうには全てを兼ね備えた特別な人間でなければならない、という「自分にはできない」という先入観を打ち消すことにつながります。

これは団体にも当てはめることができます。たとえば、We Changeの得意分野は「企画立案」。キャンペーンやイベントの企画立案、そのツールづくりを中心に活動しているそうです。

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ツールとして大きな役割を果たしているのがTシャツです。Tシャツに書かれているメッセージが人の目にとまるという点で、着るだけで情報発信する「運動家」になることができます。

「テレビを消そう運動」では、テレビを消す理由がリストになってTシャツに書かれています。そのTシャツを会話のきっかけに、「テレビを消す」行為について、個人個人に納得のいく理由を見つけてもらいます。与えられた理由では人は動かないからです。

また、「タイらしさ」や「楽しさ」についても工夫して活動しているとのことでした。たとえば、「無買日」のような海外からのアイデアを活用する場合、大型スーパーやデパートを利用せず、市場や個人店舗で買物をするタイ人に、「無買日」をそのまま展開しても、かえって「普通の人々」に害をなすことになるかもしれません。

代わりに労働問題や環境問題に配慮した製品を買う日にすることも考えたそうですが、そうした目的を全面に押し出しても、運動としては広がりづらく、スタッフたちもそういう買物が「楽しい」とは思えなかったことから、「楽しく」できることを考えた結果、「何も買わない3日間」というキャンペーンになりました。

「無買日」より余程難しそうですが、この期間、知り合いや近所の人たちと助け合うことになり、お金や買物について考えるだけでなく、人間関係を見直すことになり、何より楽しいということです。

ナマケモノ倶楽部でも、「わたしにできること」が大切にされていますが、そこには特有の「ゆるさ」があり、We Changeの4つの役割というような明確さはありません。「楽しむ」という点も、両者に共通していますが、We Changeでは、「吹き出し」型のステッカーにセリフを書いて、政治家のポスターに張るというような「いたずら」の要素もあるようです。どちらが良い、ということではもちろんなく、お互いに学ぶ点があるのではないかと思いました。
posted by GNH at 22:45| Comment(0) | GNHツアー
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