2011年11月08日

環境平和運動家、ファンさんとの3日間〜韓国GNHツアーレポート

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10月21日〜25日まで韓国にいってきました。辻さん、吉岡さん、ナマケモノDVDブックシリーズの撮影を担当してくださっている本田茂さんと一緒です。

旅の目的は、環境平和運動家で人気作家のファン・デ・グォンさんへの取材。12月にファンさんを日本にお招きすることになっているので、事前インタビューと打合せ。また、DVDブックのサティシュさん、川口さんに 続く第3作制作に向けた撮影も兼ねていました。

今回の旅では、通訳兼コーディネイターのキム・スヒャンさん、ドライバーを担当してくださったコンさんと息子のエディくんにも大変お世話になりました。

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霊光は光州から1時間くらいの場所です。市街地から田んぼへとでこぼこ道をすすみ、 ファンさんが現在拠点にしているエコビレッジ、生命平和マウル(村)へ。

約17ヘクタールの敷地には、畑、トレーラーハウスをうまく組み合わせたメインの居住スペース、土の家、トレーラー図書館、分離式コンポストトイレ(馬場は分離式は初体験!)、平飼いの鶏小屋には「コケコッコホテル」という名前がつけられていました。畑のほかにも道端の野草園には、食卓に並んだものがいっぱい!

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チ(菊科の一種)、エゴマ、ヒマシ、スミレ、タンポポ、カタバミ草、母子草、数珠ハトムギ・・、そのまま生でかじりながら説明をしてくださるファンさんは、血色よく日に焼けたおじいちゃんという印象なのですが、実は辻さんと同世代。

ファンさんは、1985年、当時のチョン・ドファン大統領時代にねつ造されたスパイ事件により「無期懲役」の宣告を受け、30歳から13年間の長い月日を刑務所で過ごしてきました。

生きる希望を失い、また拷問や劣悪な刑務所での環境に身体を病んだとき、ファンさんは「生きのびなければ」と思い自然療法に目を向けるようになります。そのときに目に入ったのが、刑務所の運動場に生えている小さな小さな野草たち。そこからファンさんと野草とのいのちの交流がはじまるのです。(詳しくはNHK出版『野草手紙ー独房の小さな窓から』をお読みください)

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近くで文化的なパーティがあるからと誘われた夕食前に、ファンさんに案内していただいたのが霊光原子力発電所。エコビレッジとかオルタナティブなイメージしかなかった霊光に実は原発があることを昼間に聞いた私たちは、「ぜひ行きたい!」とファンさんにお願いしたのでした。

エコビレッジは霊光原発からなんと20キロ圏内。韓国は日本より小さい国土に21基もあり、全機稼動中とのこと。訪れた霊光原発は6基の原発があり、その近くには日本と同じく?、太陽光パネルがどどーんと並ぶエリアもありました。民家がすぐ近くにあるのも気になりました。

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エコビレッジに1泊させていただいた私たちは、ファンさんや若い住人たち(ファンさんや生命平和結社の活動に関心をもって集ってきたそう)とともに、朝7時から「百拝」というお祈りに参加しました。

百拝そのものは仏教の儀式だと思うのですが、ここでは生命平和祈願として、すべてのいのちに対する感謝の気持ちを込めて祈りを捧げます。立ったり座ったりを繰り返すので、健康体操のようでもあります。百拝をリードするテープがあるので、100回のおじぎを数え間違えることはありませんでした。

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お昼まで滞在したあと、ファンさんも一緒にソウルへ。途中で、大田刑務所に寄りました。ここはファンさんが1997年に収監されていた場所です。カメラを持った我々一行はかなりスリリングな経験もしましたが、ファンさんの「怒りは今はありません」というコメントが印象的でした。

24日午後には、ファンさんと一緒に西大門刑務所へ。現在は公園と博物館になっていて、ジョギングをする人、散歩をする人などのどかな風景でした。刑務所は日帝時代に建てられたものだそうです。レンガの頑丈そうな建物を複雑な想いで見上げました。

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コーディネイターのスヒャンさんにソウルの大きな本屋さんに連れて行っていただいた馬場。ファンさんの著書(韓国語)を購入するためだったのですが、『野草手紙』は、ヘレナさんの『ラダック、懐かしい未来』とならんで、今でも平積みされているベストセラー本(韓国で80万部)。来年が出版10周年にあたるので、新しい解説文をいれた版も準備しているなどの話もお聞きしました。

24日夜には、ホンモという集まりに参加。生命平和結社メンバーを中心に、フリーで意見交換する場だそうで、ソウル在住の若いアーティスト、お母さん、韓国のナマクラともいうべきKWENメンバーのみなさんも参加してくださり、平和や開発について、それぞれの考えていることをシェアしました。

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旅を通じて考えさせられたのは「怒り」と「祈り」いうキーワード。ファンさんの壮絶な半生、それに対して、今、とても心穏やかに暮らしていらっしゃる日常。韓国での海軍基地建設問題に対し、怒っている民衆と、ただそのそばで百拝をし続ける 生命平和結社メンバーたち。

社会変革をのぞんでいるけれど、それを怒りではなく、祈りであらわしているように受け取り、9月に来日したアンドレイ・ラムさんの、頭と心と身体をつなげるという感覚を思い出しました。自分がトゲトゲして怒っていては、社会も地球も休まらない。

かといって、自分だけの平和を追求して隠遁するようでは、世界は変わらない。だからこそ、生命平和結社のような、その場に「いる」ことで反対の連帯意志を表明する。そして、自分にできる「祈る」という行為を続けることで、自分にも、相手にも、慈悲の念を送るのかなと。

12月にファンさんとお会いできる場を、今、沖縄・九州・横浜で企画中です。ぜひいらしてください。

【報告:ナマケモノ事務局・ババナオコ】
posted by GNH at 14:23| Comment(0) | ポスト311を創る
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