2012年06月19日

「幸せ」の指標化〜GNH委員会インタビュー・前編

インタビュー:「GNH委員会」の役割(抜粋)
2012年3月1日@ティンプーの滞在先ホテルにて
お話:ツェンチョウさん、通訳:辻信一、記録:船山由香理


政府の機関である「GNH委員会」で働いていますツェンチョウと申します。

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●GNHとは

GNH(国民総幸福)とは、物質的な福祉・幸福と、精神的・文化的な幸福の間にバランスを作り出すための、ひとつの開発(かいほつ)アプローチのことです。GNHという考え方は、すべての人々が幸せであることを望んでいるとすれば、政治も個々人の幸せの条件をつくることを目標とすべきだという考え方です。

GNHの4つの柱といわれているものがあります。1つめが持続可能で公正な社会的経済的発展、2つめが文化の保存と促進、3つめが環境の保全、4つめがよき政治です。

1:持続可能で公正な社会的経済的発展とは、貧困の削減、すべての人が小学校程度の教育機会と医療サービスを受けられること。農地の公正な分配、僻地のインフラ整備など。

2:文化の保存では、伝統的な価値観を後につないでいくことが重要です。ブータンでは非常に強いといわれている家族の絆ですが、おじいさん、おばあさんが子どもの面倒を見て、子どもも彼らを尊敬し、大事にすることも含まれます。それから相互扶助、奉仕の精神、瞑想の促進、伝統的な知恵や文化の継承も含まれます。

3:環境の保存も非常に重要です。憲法ですでに定められていますが、国家の60%以上が森林(自然林)でなくてはならない、というものがあります。

4:ガバナンスは、政治よりも広い意味でつかわれています。王政から民主制に移ってからまだ4,5年しかたっていないのですが、それを機として、生き生きとした文化をつくっていこうじゃないか、ということです。

ブータンでは一番上に国があり、その下に20の「ゾンカ」(県)、その下に205の「ギョッ」(区)がありますが、この3つの関係が非常にスムーズであることが大事です。そして言論の自由、それから差別からの自由があります。性、民族、宗教など、いろんな意味の差別から自由であること。一番最後が汚職と戦うということ。

GNH(国民総幸福)は、前国王が言い出してから40年の歴史をもっています。これまで4つの柱はあるものの、スローガン的なものにとどまっていました。それを、2008年に民主制が始まったのを機会に、今度はより具体的な指標を作成し、数値化していこうということで、GHNコミッションがつくられました。2年ごとにGNH世論調査、実態調査を行っています。

私はそこの役人をしているわけですが、このGNHコミッションのもとで指標づくりが行われ、今では120の指標があります。

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■幸せをホリスティックに考える


さて、指標ですが、先ほど説明したGNHの4つの柱からさらに細かく、9つの領域に分けて考えました。

1:心理学的福祉・幸福。この中にはスピリチュアリティも入っています。
2:健康
3:タイムユース。睡眠時間、労働時間、余暇はどのくらいなのかということです。
4:教育。文字の普及率、学校教育がどのくらいかといったことです。
5:文化的多様性としなやかさ
6:良い政治
7:コミュニティバイタリティ。コミュニティの活性度ですね。
8:生態的多様性としなやかさ
9:生活水準

今、世界では、経済成長だけの指標(GNP)ではだめだということが言われ、新しい指標作りが様々なところで試みられています。それでも特に「心理学的なもの」、「時間的なもの」、「文化的多様性」、「コミュニティ」の4つについては、ほとんどのところで忘れさられている気がします。

個人のレベルでも社会のレベルでも、幸せというものを考えるとき、この9つの領域をカバーする、ホリスティックなアプローチが必要です。

この9つの領域を9つの器だと思ってください。9つの器がどれくらいいっぱいかということがGNHの指標になるわけです。ブータンで2010年に実態調査を行った結果、GNH度は74.3%でした。

これを分析しますと、9つの器のうちの6つが大体満ち足りていると言った人が40%でした。これは私たちが思っていたより悪く、まだまだという結果でした。しかし大事なことは、器が空っぽ、もしくはすごく少ないという欠乏度の高さはなかったということです。

ある程度は器が満たされている、割とうまくいっている領域は「健康」、「文化的多様性としなやかさ」、そして「生活水準」の3つでした。逆に、うまくいっていないのは「教育」、「心理学的な福祉・満足度」、「コミュニティバイタリティ」でした。

(続く)
posted by GNH at 17:55| Comment(0) | GNHツアー
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