2013年06月04日

ガサ・ツェチュ祭【2013年春GNHツアー報告集より】

2013年3月21日朝ホームステイ先のダムジ村を出発。
ところどころ雨のために崩れた山道を小型バスは進んでいく。しばらく走ると、道沿いにたくさんのテントが目立つようになった。ツェチュに参加するため、北部から馬とともに家族総出でやってきた遊牧民ラヤの人々だという。青いビニール製のテントの隙間から子供たちが顔をのぞかせてこちらを見ている。

やがて、ガサ・ゾンがその姿を現した。美しい白壁の伝統的な建てものが山の上にそびえ立つ。荘厳な雰囲気とともに威容を感じさせる、まるで山城のようだ。
ゾンに入るときは民族衣装の正装が義務づけられている。 男性はゴの上にカムニという白い布(王様は黄色、貴族は赤など身分によって色は違うそうだ)を肩から輪のように斜めにかけ、女性はキラの上からラチュとよばれる長い手織りの華やかな布を左肩にかける。
私たち外国人に服装の制限は多くはないが、帽子はとらなければならない。

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山の斜面を利用したゾンの建物は奥に進むほど高くなる。狭い入口から上へ上へと延びる石の道では 神聖な場所へと足を踏み入れていく高揚感に包まれる。
急な階段上の広場で、もう祭りは始まっていた。私たちのグループはガサ・ツェチュに参加した初めての外国人だったらしい。ガサ県知事や高僧と同じ、屋根付きの貴賓席にて見学。恐縮しつつ飲み物やお菓子までいただいた。

黒い衣装に黄色い輪の帽子をかぶった男性たちの明るい感じの歌と踊り。きらびやかなゴとキラに身を包んだ男女が交錯する楽しげな歌と踊り。動物や骸骨などさまざまな異形のお面と原色の華やかな衣装に身を包み、回転したり体を大きく反らせたりと激しい動きを見せるお坊さんたちによる宗教的な踊り。黒を基調とした独特の民族衣装にとんがり帽子姿のラヤの娘たちの民謡と踊り。そして、終始動き回りそれらを茶化すようにおどけて会場を沸かせる道化たち、、、。

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入れ代わり立ち代わりさまざまな歌や踊りが繰り広げられるうちに観客は増えはじめ、昼頃には華やかなゴやキラで着飾った子供たち、老若男女で広場は埋め尽くされた。

広場からさらに階段を上っていくと、靄に包まれた山々。墨絵のような世界が眼下に広がる。若い僧たちの真っ赤な僧服の背中越しにそれを眺めると、黒と白と赤のコントラストが美しい。そこはまるで天空の世界。神様に一番近い場所(おそらく!)で味わった至福のひと時だった。

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さて、数日後のブータンの新聞によれば、昨年までのガサ・ツェチュには、お坊さんたちによる華やかな宗教的な踊りは行われなかったので、ラヤの人たちは遠くプナカ・ゾンまで足を延ばしていたとのこと。今年は演目も多くなり、多くの人が参加して観客も増え、例年にないにぎやかなガサ・ツェチュとなったそうである。

私たちグループにとっても、本来の予定にはなかったガサ・ツェチュ参加だったのだが、パロなどの大きなツェチュとはまた違う、ゆったりとした雰囲気を味わうことができたのは本当にありがたかった。ペマさんの計らいと、突然の外部からの来訪者である私たちを快く迎え入れてくださった皆さんに心から感謝したい。

(2013年報告集より/報告者:中久保久仁子さん)


★★ブータンGNHツアー情報はこちら★★
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