<ブータンGNHツアー2012・春 報告集より>
タクツァン僧院(須藤綾子)
ブータン人の信仰のもっとも熱烈な対象となるのが、ブータンに仏教を広めたと伝えられるグル・リンポチェである。
八世紀にグル・リンポチェがはじめて西ブータンを訪れたとき、彼は虎の背中に乗って飛んできた。そのため、この聖地をタクツァン、すなわち「虎のねぐら」と呼ぶのだそうだ。
前日までの日程を無事こなし、いよいよ最終イベントのタクツァン僧院へのトレッキングの日となった。
若者の中に混じり、リタイア組ただ一人の私は、脱落しないようにと、多少の不安を抱えながらスタートした。
歩き始め、入口付近に土産物の店が何軒かあり、寄り道しかけると、「帰りにしてくださいね」との声がかかる。馬が数頭。そうか、これに乗って行く人もいるのだとは聞いていた。出だしこそ平らではあったが、少し行くとかなりの傾斜である。道幅もそう広くはない。しかも、道の真ん中には馬の落とし物がかなり点在している。その中を歩く。
見上げる先はタクツァン僧院。かなりの高さを感じる。建物の下には四百メートルもの岩壁で、まるで建物が山肌にしがみついているよう。あんな高いところまで登れるか。
不安が過ぎるが、まずは足元の一歩からと思い直し、歩を進める。
背中に入れたタオルが、じき汗で湿り気を帯びてくる。所々で、頂上の景色を写真に収め、見上げる。同行の娘が時々水筒の水をよこし、気遣ってくれる。ガイドのぺマさんも、少し太めの身体を重そうに引き摺りながら、歩いている。皆それぞれのペースで、何とかカフェテリアまで到達。二時間ほどはかかったか。ここで一区切り。素晴らしい眺めだ。
そこから今度は下りとなる。行き交う若い女の子が、息を弾ませハァハァと言っている。帰りはここが難所となるのかと思いながら、歩みを進める。
途中、ザアザアと流れる滝に出合う。道は水しぶきで濡れ、足元を気をつけて歩かなければ滑りそうだ。汗ばんだ身体に滝のしぶきは涼しく、心地よく感じた。そしてその先は、上りの石段が続く。段差がかなりあり、きつい。登って行くうちに空気の薄さというか、気圧に押されるような圧迫感を少し感じた。無理しないようにと意識をして、休み休み登って行き、遂に到着。タクツァン寺院へと入った。
岩壁に沿って作られた寺は、幾つもの建物になっていて、下から見上げていただけでは分からない建物が裏側にもあった。中には岩壁を伝って水滴が滴っているところもあり、ひんやりとした空気が立ち込めていた。寺院に入るとまず、祀られる神に対し「五体投地」、すなわち、ひざまずき、両手・両足・額を地につけ、立ち上がる行為を三度繰り返して礼拝し、さらに場所を変えて、もう一度礼拝した。
グル・リンポチェは八つの化身の姿を持っており、そのうち怒りの姿であるドルジドロが、パロ地方の土着神を調伏し、仏教に改宗させたという。グル・リンポチェがチベットに帰った後も、ここタクツァン寺院には弟子たちが巡礼に訪れ、チベット仏教圏全体でも指折りの聖地になっているとのことだ。
この厳しい行程を経て、これほどの聖地に来れたことは、この旅のフィナーレにふさわしい日程だったと感無量。途中のカフェテリアまでも、決して楽な道のりではなかったが、やっとありつけた昼ご飯を、景色を眺めながら思い思いの場所で済ませ、下山となった。心地よい疲れとともに、満ち足りた気分で、この旅最高のイベントを全員無事で終えられたことに感謝した。
◆◆ 現在、2013年春、ブータンGNHツアー募集中。今回もタクツァン僧院を訪れる予定です! ◆◆
2013年01月17日
タクツァン僧院でのトレッキング
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2013年01月09日
ブータンのお料理&お酒事情
今回は気になるブータンの食事&お酒事情。
<ブータンGNHツアー2012・春 報告集より>
「ブータンでの食事やお酒」(中島次郎)より抜粋。
ブータンではとうがらしを野菜として食べると聞き、「とうがらしを野菜炒めのようにして食べるのか・・・何て過激な!!」と思っていました。しかしティンプーに着いて、初めて見たエマ・ダチ(とうがらしのチーズ煮込み)は、ビュッフェの最後の場所に比較的小さめな器に控えめに置いてあるものでした。まず少しだけ試してみると、やっぱり辛い。でもまろやかな味のチーズとよく合っておいしかったです。ハバネロのような激辛の種類のとうがらしではないのかもしれません。とうがらし自体の辛さの違いの他に、とうがらしとチーズとのからませ方もあるのか、同じエマ・ダチによっても、辛いものとそれほど辛くないものがあります。ツアーでは朝食以外の毎食エマ・ダチに出会うことになりますが、ぜひ食べ比べてみてください。ちなみにエマ・ダチを作るときに一番最後に入れる材料は「愛情」だそうです(田中優子・辻信一『降りる思想』大月書店)。
(中略)それ以外では、このツアーの食事(ホームスティ先の食事以外は基本的にはすべてビュッフェです)には 、蕎麦(そば)、蒸餃子の「モモ」などがありました。ご飯は赤米が大部分だったと思います。また、ビュッフェの中には必ずと言っていいほどチャーハンや焼きそばもありますが、ブータンの食べ物に適応できるか自信がないかたはレトルトものや調味料を日本から持っていけば役に立つかもしれません。
あと、忘れられないのがぺマさん宅のパーティーでごちそうになった松茸。ブータンでは松茸が特産品で味も日本産のものに引けをとらないそうです。あれだけ多くの松茸を目の当たりにしたのは生まれて初めてでした。この時には、食べ放題と言えるほど量があり、私が今まで44年間の人生で食べてきた松茸の総量を上回る量を食べたかもしれません。ただ、この松茸は8月ごろがシーズンのピークとのことで、3月に参加される場合は「食べ放題」は無理かもしれません。でも大丈夫。3月でも乾燥松茸を買うことができます。こちらは私は食べていないのですが、ぜひお試しください。
飲み物としてはドルジおじさんの家やホームスティ先などでふるまっていただいたバター茶はチベット文化圏でしか飲めないもののようです。塩分と脂肪分が多いので好き嫌いが分かれるかもしれませんが、私は好きでした。食事の後には大体いつも紅茶かコーヒーと簡単なデザートが出されるのですが、この点にはブータンのもてなしの心を感じました。
(中略)ガイドブックの「地球の歩き方」には、ブータンは「たとえどんなにお金を積んでも本格的な中華料理・フランス料理・イタリア料理を食べられない」数少ない国の一つとあります。確かに私たちのブータン滞在中の食事もバラエティに富んでいたとは言えないかもしれません。しかしこれは逆に言うと、グローバル化の波に巻き込まれておらず、素朴ではあるけれど、(おそらく)有機農法で作られた身近なものを伝統的な食べ方で調理しているという、ブータンの文化の大事な一面を表しているようにも思えます。
一人暮らしの私にとっては、1週間、朝昼夜の毎食の全てを誰かと食事を共にするという久々の経験でした(辻信一さんのいうところの「共食」でしょうか)。だから何を食べても一層おいしかったのかもしれません。野外のピクニックでみんなで食べた食事もおいしかったです。
さて、お酒のほうですが私は好きではありますが、正直言ってあまり味がわかるわけではありません。ですのでごく簡単に。
ビール(レッドパンダ)は最後の夜に飲んだだけですが、香りが豊かでおいしかったです。ウィスキーもペマさん邸のパーティーでも振舞われたスペシャル・クーリエしか飲んでいません。私はウィスキーは普段ほとんど飲まないのですが、なかなかいけると思いました。アラ(焼酎)は残念ながら飲むチャンスがありませんでした。これから参加される方はぜひお試しください。
◆現在、3月のブータンGNHツアー・春、募集中!◆
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2013年01月07日
辻信一さんより〜ブータンでの年末年始
A Happy Water Female Snake Year!
あけましておめでとう!
今日ブータンのパロを出て、ここバンコクにきました。今度はペマとののんびり二人旅、冬のなんともスローなブータンを満喫しましたよ。
初詣はブータンの首都ティンプーにある寺院に。そのお寺の中に祀られている「ルー」という精霊は、石の中に住んでいる蛇であり、また水の神様だといいます。
ブータンでできた俳句をふたつ
冬の陽を 浴びて束の間 猫となり
寒風は 望むところと 祈祷旗(きとうばた)
またみなさんにお会いして、ブータン話ができることを楽しみに。
辻信一
◆現在、3月のブータンGNHツアー・春、募集中!◆
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