2014年05月28日

生きとし生けるものへ祈りを捧げる〜プナカ、尼僧院にて

現ブータン国王(第5代国王)がロイヤルウェディングをあげたことで知られる古都プナカ。二つの川が交差する中洲に白壁の美しいゾン(お城)が建ち、その周りには緑豊かな山と急な斜面に丁寧につくられた棚田。今回9月のツアーでもプナカ・ゾンはじめ、イビサ村でのホームステイ、そして尼僧院を訪問する予定です。
昨年ツアーで好評だった尼僧院でのインタビューをおすそわけします!

>>ブータンGNHツアー・2014秋、募集中!こちら

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報告:荒引圭子(GNHツアー2013秋参加者)


現国王の(母方の)祖父が建てた尼僧学校。できて3年。13〜21歳の女の子が9年間勉強し、その後、山にある尼僧院に入るという。


Q 自分の意思でここに来たのですか?
A 自分の意思で決めて来ました。なぜなら、生きとし生けるもののために、尼僧になりたいと思ったからです。この世のものだけでなく、六道の全て、神・地獄界すべてのもの達のために祈りたいのです。

Q 経典は何語ですか?
A もともとチベット語をゾンカ語に飜訳したものです。

Q 食事はどんなものを食べているのですか?
A 朝はお茶一杯、昼・夜は菜食。お客様が来たときた寄付のお肉があれば、お肉も食べます。

Q 一日の生活スケジュールは?
A 
   4:30 起床
   6:30 まで お経
   7:00 〜 11:30 授業
   11:30 〜 13:00 ランチ
   13:00 〜 16:00 授業
   16:30 〜 18:00 夕食
   18:00 〜 19:30 お経
   19:30 〜 22:00 まで 自習

Q どういう時に幸せを感じますか?
A 勉強を終えた時が幸せです。

Q 家族に会えますか?
A 緊急以外は家族には会いに行けないが(家に帰ることはできない)、家族がここに会いにくることはできます。12 月には10 日間の休みが取れますし、プナカのツェチュには 3 日間、半日ずつ行くこともできます。

Q 尼僧になった理由は?
A 来世のことを考えたから。仏教に興味があったから。生きとしいけるもののために生きたいと思ったから、つまり、誰かの影響でなく自分で決めたことです。
母や全ての人の為になる道を生きたいと思った。仏典を英語で伝えられる尼僧が少ないので、やってみたい。両親の来世のためにも、生きとし生けるもののために祈りたい。

Q 親や友達がいないことは寂しくないのか?
A 時々は寂しくなることもあります。

Q 苦しいことはありますか?
A 勉強が辛い( 笑)。でも、ここに来てから3年、誰一人辞めた人はいません。

Q GNH をどう思いますか?
A GNH のことは知っていますし、昔より、その考えがみんなに浸透していると思います。私たちがここで勉強していることは、GNH に関係があることだと思っています。
   
Q 生活費はどうしているのですか?
A お金は国から支給されていて、保険と食事代が天引きされ、1000 円程度のお小遣いが残ります。石鹸、本、スリッパを買うと後は何も残りません。

Q 日本という国を知っていますか?
A 聞いたことがあるが、どういう国かは知りません。

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(感想:中村由希)
子供の頃、なぜか尼さんになりたいと思ったことがあった。山の中で、鳥や虫、水の音を聴きながら、お寺を掃除している自分、というイメージが時折浮かんだ。
そんなことも大人になると忘れてしまい、世間的な風潮にすっかり飲み込まれてきたが、信心深い祖母の影響もあり、神社、仏閣には何かとご縁はあった。

4代王妃の父が建てたというこの尼僧院には、15歳から20歳くらいの少女達が生活しながら修行している。もちろん剃髪で、簡素な緋衣を着て、その格好は一年中変わらないらしい。お堂の中に数名の尼少女達に集まってもらい、インタビューが始まると、恥ずかしそうに突っつき合って笑ったりとその様子は無邪気で日本の少女達となんら変わりがない。

しかし、なぜ尼になったのか?という問いかけが始まると、彼女達は真直ぐな眼差しで答えた。「生きとし、生けるもののために、両親のより良い来世のために祈りたい」と。

素直に感動した。ブータンで尼になるということは一年を通し、家族に会えることはめったになく、もちろん結婚も出来ない、普通の若者達のようにおしゃれや外出を楽しむこともない。自分の人生を祈りに費やす。無邪気な少女達の中にその静かな覚悟が在ることを感じた。

小高い丘の上で美しい谷や川に囲まれ、祈りの力を信じ、身を捧げる彼女達。東京で、経済や人間関係や日々の様々なことに時間や神経を費やしている自分とは随分違うように感じる。このように世界には一生を祈りに費やし、世界を支えている人たちが結構いるのかもしれないと、感慨深い思いにさせられたひと時だった。

(感想:荒引圭子)
尼僧院の女の子達は、純粋で、キラキラした綺麗な目をしていて、自分より若い女の子が素敵な意志を持ち、修業していました。恥ずかしそうにたまに顔を隠しながらも、インタビューには楽しそうに笑顔で答えてくれたのが、印象的でした。みんなでひっついて、肩を落として興味深々に、私達日本人の話を聞いてくれました。女の子が編んだ色とりどりのブレスレットをお土産に買わせていただきました(お布施)。
posted by GNH at 13:23| Comment(0) | 西ブータン

2014年05月23日

ゲロンおじさんのお話:ブータン農村今昔

●ブータンGNHツアー2013・秋の報告集より●

NHKBSでも取材された世界一棚田が美しい村・イビサ村。今回もホームステイを通じて「ブータンのふつうの暮らし」を体験します。
>>現在募集中のツアー詳細はこちら

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イビザ村ゲロンおじさんインタビュー


「いやあ、昔は楽しかったよぉ〜。今、60 歳くらい。そうだね、昔と今の暮らしは全然違うよ。」と語るのはプナカ県近郊の農村イビサ村に暮らすゲロンさん。辻信一さんの親友でもあり、仏教に厚く、慎み深いブータン人というイメージの中、自由奔放に生きてきたゲロンさんの半生をインタビューしました。
(通訳:英語はペマ・ギャルポさん、日本語は辻信一さん)

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村には遊びがいっぱい

15 歳の時から働いていたよ。朝早く起きて、森で働いていたんだ(製材業)。お金が銀貨から変わる度に、歓迎の歌を歌わされたもんだよ。その頃の食事はね、朝はおかゆ、昼は小麦をバターで練ったもの、夜にやっと米が食べられたんだ。

昔は遊んでばかりいたなあ。ダーツやアーチェリー、石投げをよくやった。女性が米を収穫して干していたよ。男はね、働かないで、隠れて遊んでいたんだ(笑)。ゲームで賭けをしたりね。負けたら、山や川で何か取ってくるか、ニワトリをどこかからいただいてくる。

その頃は、殺生が悪いことだなんてなかった。ベジタリアンなんてのもなかったんだよ。


夜這いが許される文化


昔はね、どこの家も自由に出入りができた。自分の家と他人の家が一緒。恋愛も自由だった。今は何か理由がないと、他の人の家に行かないでしょ。もし、知らない人が家にいたら、警察沙汰だよね(笑)。

昔は一生を添い遂げる女性に出会うのに、3 年かかったもんだよ。でも今はどうだい? 一晩過ごして、結婚をして、3,4ヶ月ですぐに離婚してしまうという具合だ。

昔は、夜這いがあったんだよ。窓が開いていればいいけどさ、もし、窓が開いていなければ大変だ。まず、木を壁に打ち込み足場を作り、そして登っていったもんだよ(笑)。

大変なのは娘の親だ。娘を守るのは大変だよ。夜這いの結果、娘が妊娠してしまったら、アラとバター2kg と雄鶏一羽で十分だったのさ。両親と一緒にそれを持って行って謝罪して、料理したものを両家みんなで楽しんで、それで済んでしまった。

今とは別世界だなぁ。今じゃ大変なことになってしまうでしょう?

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教育、医療・・村での暮らし

今はとにかく便利になったね。ティンプーに行くのも楽。昔は、峠で1泊しなければならなかったんだよ。ティンプーに行って物を売って、3ヌルタムくらい稼いで帰ってくるんだ。米、豆、ナス、唐辛子、オレンジ、マンゴー、グアバなどが換金作物だった。

子どもが病気になったとき、昔はシャーマンを家に呼ぶこともあった。今は病院へ行ってドクターに治療してもらうよ。

子どもは自分の家で産むしか方法がなかった。経験のある近所の女性たちが助け合ってね。それでも問題があるときは、占星術師に見てもらって、作ってもらった薬を飲むこともあったんだ。今は、自宅出産か病院出産。緊急時はドクターが家に来てくれることもあるから安心だ。

昔は教育がなかったんだよ。近隣の学校に行くよう村から1 人くらい選ばれるんだけど、親は子を隠したくらい。だから、この村の人は、学校に行ってないんだ。学校へ行った同年代の人が偉くなって出世しているので、今はちょっと後悔しているけれど。

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60代を迎えたゲロンさんの心境

この年齢になると、知り合いも死ぬ人が出てくるから、私も死について心配になってくるよ。死は怖いかと問われれば、それは怖い。

50 歳を超えたころから死への思いが増えた分、仏教により関心を持つようになったよ。バターランプを灯したり、お寺での話を聞きに行ったりしています。

昔は、男が威張っていて、女にあれしろ、これしろと、いじめている時代。今は、ドマ(噛みたばこのようなもの)を持って行っては、女のご機嫌を伺っている(笑)。

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posted by GNH at 14:37| Comment(0) | 西ブータン

2014年05月09日

9月、棚田が美しいブータン・イビサ村への旅

ゆっくりは、楽しく、美味しい。
あなたのGNH度をあげる旅に出かけてみませんか?

お待たせしました!9月9日(火)成田発、9月16日(火)朝成田着、
http://www.sloth.gr.jp/events/bhutangnhtour2014autumn/

旅のみどころ

▼稲刈り前の棚田が美しいプナカ県イビサ村でのホームステイ
▼現国王の戴冠式も行われた古都プナカ・ゾン(城)見学
▼伝説が息づくブータン一の霊場・タクツァン僧院参拝
▼辻さんのお友達・農民ドルジおじさん宅でのティータイム
▼伝統治療院、GNH委員会などのインタビュー

さらに!
文化人類学者でGNHツアーをペマさんとつくってきた辻信一さんと現地で合流。辻ゼミ生と一緒に現地でのインタビューに参加、辻さんの解説で学びを深めます。

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posted by GNH at 23:23| Comment(0) | 西ブータン